コロナ協力金の所得税について

飲食業の事業主様からコロナ自粛による感染拡大防止協力金の節税についてよく相談されます。

コロナ禍蔓延防止の営業自粛により協力金を頂けたのは嬉しいが、食材、酒等の経費が無く所得税額が過大になるとの事です。

今回の協力金についても所得税、法人税の対象にはなりますが消費税の対象にはなりません。

令和3年度の所得税については下記表の税率となります。

所得税の速算表
課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

仮に一日の補助金額4万円×自粛日数300日=1,200万円とすると、ここから基礎控除、保険、その他11月以降の営業経費等を250万円と考え、控除後の所得額を950万円とすると所得税率は33%となり、令和3年度の所得税額は1,599,000円となります。

何とかして納付する税金を下げたいところですね。

相談された対策をいくつか検証してみます。

  • 車を買う。

まとまったお金が入ってきたので営業車を買い換えたいとの事ですが、令和3年度に車購入額全額を経費にする事はできません。営業車と言っても乗用車の場合、週末等個人的に使用する事が考えられますので自家消費分7分の1は経費として算入できません。また買い換えた車が新車の場合、耐用年数にて取得額を按分(期の途中は月数)しますので、仮に300万円の新車を購入したとしても300万円÷6年=50万円が本年度(自家消費の除く)の減価償却費となります。

では中古車購入の場合ですが、中古車は次の算式で耐用年数を計算します。

法定耐用年数-経過年数+経過年数×0.2

1年未満の端数は切り捨てとなります。初度登録から15カ月までは5年、16~30カ月までは4年、31~45カ月までは3年、最短期間が2年になるので、それ以降に購入された中古車はすべて耐用年数が2年になります。

  • 食材、酒類を今のうちに買い込んでおく。

  個人事業主の方のほとんどは青色申告の申請をしていると思われます。そのため年度末には在庫の棚卸しを行いそれについては経費算入せず、次年度以降に経費化する必要があります。食材は年度内に消費された分は経費算入できますが、酒類の翌年度持ち越し分は経費算入が難しいですね。

  • 未納であった国民年金料を払う。

 経費算入という方法ではありませんが、過年度に国民年金等の未納分を支払った場合、支払った期の税額控除に算入できます。未納期間の遡りは未申請だと2年間、申請済みだと10年間遡って支払うことが可能です。仮に年金額を月額15,000円とし2年分を遡って支払うとすると360,000円になります。また配偶者の年金を負担した場合も支払った者の控除額となります。この他国民年金には前納制度があり2年先まで年金保険料を支払うことが可能です(参照https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/20150313-03.html)。こちらも支払った期の税額控除に算入できます。この条件だと

(未納期間2年+前納2年)×2人分×15,000円=1,440,000円を年金として納める事となりますが、当初の例(補助額1200万円)でいくと控除後の所得額も806万円となり税率も33%から22%まで引き下げる事が可能です。

今年も残すところ1ヶ月僅かとなりましたが、節税対策として参考にしてみてください。